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六月一日 伽凛(ウリハリ カリン)
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夢と死と紅茶の魔法少女。淹れたての紅茶の上品な香りを纏っている。
いつでも一所懸命な頑張り屋さん。感情表現が豊かで表情がころころ変わる。しっかりしているようでどこか抜けている。アンティークカップみたいに丁寧に扱わなければ壊れてしまいそうな、可憐な少女の見かけに反して規格外の怪力の持ち主。親指と人差し指でりんごをつまむと粉々になる。その反面、精神面はあまり強くない。
紅茶やハーブティーを淹れたり、お菓子を作るのが得意。度々お茶会を開いている。
兄のライムとは「ふたりでひとりの魔法少女」。魔法少女に変身すると少し背が伸び、周囲にひらひらと花弁が舞う。性格が好戦的になるようで、魔法少女の自分に元々の人格が呑まれてしまいそうで少し怖いらしい。
自分と関わった人間がみんな死んでしまったので、自分のことを死神だと思っている。自己肯定感がとても低い。唯一の肉親である兄に精神的に依存している。
ずっと、王子様に憧れている。
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【死神】
昔から人の死をよく経験してきた。自分が触るとその人が死んでしまうと思い込んでいるため、人に触れることが怖い。
いつか唯一の肉親になってしまった兄さえも失ってしまうのではないかという不安から精神を病んでしまい、お風呂にもお手洗いにもついて回るほどライムにべったりな時期があった。やりすぎなほどライムの世話を焼きたがるのは、ライムのため以上に自分の心を守るため。ライムが僕たちはふたりでひとつ、僕はカリンちゃん自身だから触っても大丈夫、と言ってくれてからはある程度安定している。
カリンとライムはあらゆることにおいて正反対の性質を持っているけれど、そのことによって均衡が保たれていると信じているため、カリンは長期間兄と離れていると精神的にとても不安定になる。
【線路に飛び込む人】
幼い頃、線路に飛び込む人を見た。自分のせいでまた人が死んでしまったと悲しくなると同時に、身体が熱くなるような、浮足立つような感じがして、そんな自分が嫌になった。
誰かを守るために強くなりたいと思う一方で、自分が無残な死体になることを想像して高揚したり、心底で命のとりあいを求めていて、一種の破滅願望のようなものを抱いている。
【初恋】
カリンは同級生をホフルによって惨殺されている。その圧倒的な力に、纏う死の香りに、艶めかしく返り血を拭う姿に恋をした。この出来事をきっかけにおしゃれに目覚めた。相手はとんでもない罪人なのに。そのことに罪悪感を抱いている。
ウツラから話を聞くまで、ホフルのことはずっと女の子だと思っていた。
【王子様への憧れ】
幼少時代は活発でボーイッシュな女の子だった。昔からいじめられっこのライムを庇っていた。そんな自分を王子様みたい、と言って涙をぬぐって笑う兄。それが鮮明に記憶に残っている。
元々ライムが魔法少女アニメを好きだったため一緒に見ていて、カリン自身は魔法少女よりも助けに現れる王子様の方に憧れを抱いていた。兄が魔法少女に憧れているのなら、自分は兄を守る王子様になろう。カリンは兄にとっての王子様でありたい。
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【エス】
周りを赤く染めてしまう。
目の前で真っ赤に染まったあの人の靴。赤に変わるマロウブルー。惨殺された同級生の血の赤。カリンの人生で思い出深い出来事はいつも赤色と共にあった。症状が出始めると瞳が徐々に赤くなる。
カリンは大切な人を守るための力をずっと求めていて、エスによって不自由になることと引き換えに魔法少女のような不思議な力を得たことは、彼女にとっては喜ばしいことであった。
本人がエスに対して過剰な信頼を置いているからか、彼女のエスは言葉以上にできることの幅が広い。
青くなった血を赤く染めることで、見かけだけでなく実際にチアノーゼが解消されることがウツラの例により判明している。
その気になれば人体を真っ赤に染めることで体温を上げて殺すことだってできてしまうかもしれない。
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【関係性】
大好きなお友達。友達があまりいなかった、というより深い仲になる前に全員死んでしまったので、ユミがほぼ初めての友人で、特別大切に思っている。
暴力は駄目だよ!…なんて窘めることはなく、大きな力により何かを解決しようという考え方は自分と似ているのではないかと感じている。でも友達がそれによって不利益を被ってしまうのは悲しいなと思うから、暴力を振るうこと以外での力の使い方を一緒に考えたいなと思っている。
とても尊敬している先輩。施設に来た当時はカリンはエス患者ではなかったため、ウツラがカリンの入所について掛け合ってくれた、という経緯がありとても感謝している。
趣味が合うのでお互いのオススメ、例えば紅茶やボディソープを贈りあったりしている。お茶会にもよく誘う。
一緒にいて楽しい相手。何気ないところで誰も気が付かないような気遣いをしているように感じることがあって、意地悪だけれど本当はとても心の優しい人だと思っている。
20歳で惨たらしい死を迎えるのが夢だという話を聞いて、自分にはそれが冗談なのか本当のことなのかの判断はつかないけれど、「無惨な死体になりたい」という気持ちは自分にも理解ができてしまうなと思っている。でもそれを肯定することはしたくなくてもやもやしている。
困ったときにはいつでも助けになってくれる、自慢のお兄ちゃん。ライムの言うことを妄信しがちなきらいがある。兄のために尽くすことが生き甲斐。
兄の体が弱いのは自分が養分を吸い取ってしまったからだと思い込んでいてやりすぎなくらい世話を焼きたがるものの、こうして兄の世話を焼くことも彼のプライドを傷付けているのではないかと思い悩んでいる。
自分と兄はふたりでひとつ。そう思っているけれど兄の方がよくできた人間だとカリンは感じているので、もしかしたら足手まといになっているんじゃないかとか、お兄ちゃんは優しいから何も言わないけれど、彼に好かれているのかどうか本当は自信がない。
絵本の中から飛び出してきたような素敵な女の子。カバネの事情についてよく知っているので、一緒に楽しいことをたくさん経験したくて連れ回す。
一人でお風呂に入ることが苦手なカバネのために一緒にお風呂に入ってあげている。お風呂上がりに髪を乾かしてあげたり、髪を結ってあげたり、絵本を読み聞かせてあげたり、妹のように可愛がっている。
カバネのおねだりにとても弱い。
自分の殻に閉じこもっていたウガツを外に連れ出した。
人に触れることを怖がっているところなどどうにも他人事のように思えなくて、まともに食事をとれないウガツを心配してなんとか食べられそうなものを用意したり何かと世話を焼きたがっているが、素直でない彼からは辛辣な扱いを受けている。
それでもひねくれた言動の中にある彼なりの優しさに気が付いているので、カリンはウガツのことをとても好いている。
カリンにエスをもたらしたのが他でもないウガツであり、彼への親愛の証として、組んだ手にキスをする動作をして変身するようになった。カリンにとっての守護天使さま。
朱みがかった髪に翡翠の瞳、昔絵本で呼んだ遠い国の王子様のイメージそのままで、強くて、お兄ちゃんにも好意的に接してくれる、自分の理想が形になって現れたような人。目の前にするととても緊張してしまう。
自分も是非スダクと仲良くなりたいのだけれど、なんだか苦手に思われているみたい。なんで…
尊敬の眼差しを向ける一方で好敵手としても見ており、殺しあいをして物理的にぐちゃぐちゃにされてみたいという猟奇的な感情を抱いている。
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「大丈夫だよ、大丈夫。私がなんとかしてみせるから安心して」
「な、なんでですか…!」
「えへへ、失敗しちゃった…」
「私に刃向かうつもり?ふふ、一体どこまでもつかな」
「お兄ちゃんにばかり頼っていられないよ、私だって魔法少女なんだから」